胃カメラや大腸カメラは「きつく、苦しい検査」の印象がある方もいらっしゃると思いますが、最近では機器の進歩や鎮痛剤・鎮静剤を使って楽にできるようになっています。当院では細いスコープを用いて、経口または経鼻を選択していただけます。希望によっては静脈麻酔の使用をいたします。是非ご相談ください。当院で検査を受けた後に、また再度検査を受けて頂けるように、そして知り合いの方にも検査を勧めてもらえるような検査室になるようスタッフ一同、日々努力していきたいと考えております。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)では、経鼻内視鏡または経口内視鏡の選択が可能です。経鼻内視鏡では、スコープが舌の付け根に触れないので咽頭反射(ゲーゲーと吐き気が起こること)はほとんどありません。ただし、稀ですが左右両側の鼻腔が狭い方は経口内視鏡検査で行う必要があります。その場合も、細径スコープで行い希望者には鎮静剤を用いて内視鏡検査を行っています。
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)でも、希望者には鎮痛剤を使用します。鎮静剤や鎮痛剤を使用した場合、検査後少し休んでから帰宅していただきますが、ふらつきが残る場合がありますので、当日は自動車の運転をしないようにお願いします。また、従来の空気送気の場合なかなか腸管内の空気が抜けきれず、検査後も腹部膨満感や不快感で苦しむ方がおられました。当院では二酸化炭素(炭酸ガス)送気で検査を行います。炭酸ガスは空気と比べ極めて吸収がよく、送気を中止すると速やかに腹部の張りも改善していきます。患者様の費用負担も頂いておりません。大腸内視鏡検査の前処置(観察のため腸管内をきれいに洗浄すること)では、食事、下剤を工夫して、できるだけ負担のないようにしています。
微細病変の早期発見に貢献する狭帯域光観察(NBI)により観察性能が一段と向上しています。
これまで消化器疾患の診断・治療に携わってきた経験を活かし、消化器専門医として適切な診断、治療を提供いたします。
胃液などの胃内容物の食道への逆流により起こる逆流性食道炎(胃食道逆流症)は、近年増加傾向であり、生活の質(QOL)の低下につながります。問診や内視鏡検査による診断および治療(生活指導、薬物療法)を行っています。
内視鏡検査などの検査をしても症状の原因となる病変を認めないのに、胃痛や食後の胃もたれ、胃の膨満感、胃の不快感(むかむか、吐き気・嘔吐)などが続く機能性ディスペプシアや、ストレスなどが原因で慢性的に下痢や便秘、腹痛をくり返す過敏性腸症候群に対して、病状に合った治療薬を処方しています。便秘症に対しては最近、新しい薬がいくつか発売されています。
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌療法の保険適用が、平成25年2月から追加されました。検査でピロリ菌感染が認められましたら、消化性潰瘍や胃癌の発症の原因であるピロリ菌の除菌をおすすめします。
平均寿命の高齢化と食習慣の欧米化(高脂肪、低繊維食)により、大腸癌が増加しています。内視鏡検査で治療が必要な大腸ポリープや腫瘍が見つかった場合、その場で、内視鏡治療(ポリペクトミー)を行なっています。日帰り治療を原則としていますが、出血などの偶発症が発生する危険性が高く入院治療が必要と考えれば病院紹介をさせていただきます。
消化管に原因不明の炎症をおこす難治性疾患である、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患が、近年増加しています。腸管内の免疫異常が関連していると考えられており、治療の選択肢も増えています。当院では、血液検査や内視鏡検査以外に負担の少ない腹部エコーを用いた活動性(腸管の炎症の程度) の評価も補助診断に有用と考えて行っています。
脂肪肝、ウイルス性肝炎(B型、C型)などの肝疾患、胆石症、慢性膵炎などの胆膵疾患の診断、治療も行っています。
腹部エコー検査は、被曝や疼痛などの侵襲もなく、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、大動脈、腹水など腹部臓器の大半を観察することが可能です。
ヘリコバクター・ピロリは胃に慢性的な炎症をおこす細菌として1983年にオーストラリアのウォーレンとマーシャルにより発見されました。通常胃の中は強い酸性環境下にあるため細菌が生きていくには厳しい環境にあります。ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生することで、胃の粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで、胃酸を中和して胃の中での生息を可能にしています。今では慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、その他様々な疾患の原因のひとつと考えられています。日本では1992年の時点で、若年者の感染率は低いものの40歳以上では70%以上の方が感染していることがわかっています。
具体的な感染経路は不明ですが、胃内に定着することから、口から入って胃に感染すると考えられています。糞便に汚染された水・食品を介しての感染といった衛生環境との関連性が報告されており、生活環境の整備とともに感染機会は減ってきていると考えられています。唾液中にも存在していることから感染している親との乳幼児期の濃密な接触(離乳食の口移しなど)なども感染経路として考えられています。
ピロリ菌に感染するとヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を引き起こします。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃ポリープなどの胃の病気をはじめとし、特発性血小板減少性紫斑病や慢性じんましんの原因のひとつであり、また、萎縮性胃炎を経て一部は胃癌を引き起こすことが知られています。
より正確な判定を行うために1つの検査だけでなく、複数の検査を行う場合もあります。
胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬、合わせて3種類の薬を1日2回(朝・夕)1週間内服します。1回目の除菌治療による除菌率は90%程度となっています。初回治療が不成功であった場合は抗菌薬の組み合わせを変えて2回目の治療を行います。2回目の除菌治療による除菌率は95%程度であり、ほとんどの方が1回もしくは2回の治療で除菌に成功しています。しかしながらごくわずかな方で2回とも不成功となる場合があります。現在のところ2次除菌でも不成功の場合、決まった治療法はなく、様々な施設でいくつかの組み合わせが提唱されている状況です。当院ではこれまでの経験および比較的多くの施設で行われている組み合わせで3次除菌(保険適応外 自由診療:17,000円〜19,000円)を行っています。また、ペニシリンアレルギーの方に対し、アモキシシリンを含まない組み合わせでの治療(保険適用または、保険適応外 自由診療の場合:17,000円〜19,000円)も行っています。
<除菌治療における注意>
確実にピロリ菌を除菌するためには指示された薬を正しく服用していただくことが大切です。自己判断で中止したり、飲み忘れたりすると除菌がうまくいかず、薬の効きにくいピロリ菌(耐性菌)が出現し薬が効かなくなることがあります。
胃がんの原因のほとんどがピロリ菌感染であることがわかっています。ピロリ菌感染による慢性的な炎症により、胃粘膜の萎縮性変化(萎縮性胃炎)が進み、胃がんになりやすい状態になります。そこで前述のピロリ菌感染の有無と萎縮性胃炎の有無を調べるペプシノゲン検査を組み合わせることで胃がんになりやすいか否かの危険度を判定します。ペプシノゲンは胃粘膜から分泌される消化酵素ペプシンの前駆物質でペプシノゲン1(PG1)とペプシノゲン2(PG2)があります。
A | B | C | D | E | |
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ピロリ菌 | 陰性 | 陽性 | 陽性 | 陰性 | |
ペプシノゲン値 | 陰性 | 陰性 | 陽性 | 陽性 | |
危険度 | 低 | → | →→ | 高 | |
年間の胃癌発生頻度 | ほぼゼロ | 1000人に1人 | 500人に1人 | 80人に1人 | |
推奨される内視鏡検査の間隔 | 不要 | 3年に1回 | 2年に1回 | 毎年 |